伊勢

時を超える恋詩～伊勢～

何かあれば携帯一つで相手にメッセージを送れる現代、数百年前の日本を生きた人々にとってメールに代わるものは歌でした。歌を送られ、歌で返し、周りにバレないように贈り物の中に忍ばせたりと逢えない時間をお互いの歌を詠むことで気持ちを通わせていた時代。そんな時代の恋の歌から恋愛観を磨いていきます！
今日は平安時代の女性歌人、伊勢の歌から♪

“わが恋は　ありその海の　風をいたみ　しきりによする　浪のまもなし”
（私の恋心といったら、有磯海に吹く風が激しすぎて、絶え間なく寄せる大波みたいに休む暇がないの）

“心のうちに思ふことやありけむ　見し夢の　思ひ出でらるる　宵ごとに　言はぬを知るは　涙なりけり”
（あの人と逢った夢を思い出す夜ごとに涙がこぼれてしまうの。誰にも言わないこの気持ちを知っているのは涙なのね。）

“あひにあひて　物思ふころの　わが袖に　やどる月さへ　ぬるる顔なる”
（私とあの月はお揃いね――　あの人のことを想っているときの私の袖では、そこに映る月でさえも濡れている。）

伊勢は小野小町や和泉式部らと同じく、平安時代を代表する歌人の一人で「女房三十六人歌合」に属したほどの、才能あふれる女性歌人でした。
『大奥』のように、権力や地位のために些細なことで人を殺めたり、またその地位を奪い遠くへ飛ばしてしまったり、そしてそれを目論む人間に罠にかけられる。そういったことが頻繁に起こった時代に、彼女もまたとても辛くて切ない恋をしていたそうです。

3番目の歌は伊勢の代表作の一つでもありますが、相手のことを思い涙で袖を濡らしていたけれども、その袖にこぼれた涙に映る月も濡れている。涙という言葉を一切使わず、私のように月が濡れていると表現することで、逢いたくて涙が止まらないんだよ！！！という気持ちを伝えようとしている奥床しさか高く評価された歌です。

「違う表現で同じことを伝える」そんな伊勢の恋愛テクニックが見えてきそうです！
確かに、「逢いたくて涙が！！」なんて言うメールが毎日受信ボックスに溜まっていくのを見ていたら、「・・・病気？」ってゲンナリしますよね。
基本的に人は同じ話を何回もされると不快に感じます。伊勢のように超高度文法を使う必要はありません！「嫌なことあったけど○○が言ってくれた言葉で頑張れた！また教えてよ！！」とか、そんな簡単な言い回しで十分です。ぜひメールやLINEでのコミュニケーションが多い方たちは、伊勢テクニックを使ってみてください！